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2005年07月03日

女子刑務所―女性看守が見た「泣き笑い」全生活  講談社文庫

刑務所っていったいどんなところなのだろう、そんな疑問をお持ちの方も多いと思う。そんな疑問に素朴に答えてくれるのが本書。ポップなタイトルとは裏腹に、実は、純朴な女子刑務官の現場での格闘(葛藤)の記録である。

現場の論理と人権尊重理念の葛藤。慢性的な人手不足による過酷な勤務環境。現場の問題を黙認し、大過なく任期を終えようとする法務キャリアの刑務所幹部…。
著者である藤木美奈子氏は、刑務所での激務・孤立に加え、夫からの暴力などもあいまって体調を崩し、2年ほどで刑務官を退職することとなる。この著書は、それから長い年月を経て世に出たもの。単なる恨み節でないことは当然として、刑務所という「社会」を一般社会へ紹介していきたいという著者の強い思いが伝わってくる。
私が役所にいたとき、「役所を辞めた奴が書いた暴露本は腹いせで書いたものだから信用するな」と周りが口にしているのを聞いた。その主張が真である場合ももちろんある。しかし、本書などに対して言えば天に唾することになるのではないか…そんな謙虚な気持ちにさせられる本だった。
刑務所を退職する著者に対して、担当課長は「職場を途中で辞めるということは、負けることだ。君は負けたんだ」といったという。さもしい台詞である。「辞めることすらできない己こそが囚われの身」であるかもしれないことに、思いをめぐらすこともないのだろうか…。
本書の題材となった女子刑務所像からすでに20年程が経過していると思う。その間に刑務所を取り巻くさまざまな状況は相応に変化しているだろう。とはいえ、著者の感じた疑問、刑務所の問題点は少しでも改善されてきているのだろうか。否、近年の名古屋刑務所受刑者虐待問題を見て、著者は男女の差こそあれ「刑務所いまだ変わらず」の思いを強くしたのではないだろうか。
そういえば、この役人廃業掲示板にも女子刑務官の方から書き込みをいただいたことがある。別に刑務官に限ったことではないが、役人廃業を考えるみなさんには、公務員を続けているときの「葛藤」というものを、どうか大切にしていただきたい―。読後、その思いを新たにした。

投稿者 nao_yamamo : 2005年07月03日 16:49

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