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公務員、辞めたらどうなる ~雇用保険~

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お名前

執筆者 吉田真弥尾さん(現役公務員)

経歴

大学卒業後、某地方自体体に奉職。
20年以上勤務する傍ら、公務員としての働き方に不安も感じ始め、独学で社会保険労務士の資格を取得。
当面退職予定はないものの、常に自己研鑽に磨きをかけるため新しい知識の入手に日々邁進中。

会社を辞めたら、失業手当をもらいながら再就職の活動をする、などということをよく聞きますね。
失業手当とは、雇用保険の被保険者が失業状態にあるときに支給される手当のことをさします。

ただ、

『公務員は、法律で雇用保険の適用が除外されています。したがって、失業手当は受けられません。』

で終わってしまうのも何なので、雇用保険について説明します。
ちなみに、雇用保険の適用は公務員は除外されていますが、まったく関係がないわけではありません。そのあたりはあとで説明します。

 

【雇用保険基本手当のあらまし】

 雇用保険の給付はいろいろありますが、メインは基本手当です。
失業中にもらえるもので、先に出た「失業手当」と呼ばれているものです。
        
この基本手当の金額は、離職前6ヶ月の賃金を180で割ったもの(「賃金日額」と呼びます)のおよそ5割から8割(賃金日額が低いほど割合は高くなります)で、被保険者期間や離職理由、年齢で決まる給付日数分支給されます。

この支給手続きに必要なのが勤務先から渡される「離職票」なのです。よくネットで「会社を辞めたら離職票をもらおう」などと出ていますね。



【失業者の退職手当】

 公務員の場合はもとより雇用保険の被保険者ではありませんから、辞めても雇用保険の給付はありません

これは退職手当があるから、ということでしょうか。
しかし、仮に1年程度で退職した場合、退職手当が少なく雇用保険の失業手当より少ないことが考えられます。


簡単に計算してみます。
年齢25歳の職員、給料が18万円で、勤続1年で自己都合により辞めた場合、退職手当の支給率は0.588(国家公務員)ですから退職手当は18万円×0.588=105,840円です。
仮にこの職員が雇用保険の被保険者だったとすると、賃金日額は18万円×6ヶ月÷180=6,000円、基本手当日額は4,455円となります。支給日数は90日ですから基本手当総額は4,455円×90日=400,950円です。


公務員には退職手当がこの「仮の基本手当」に足りない分を「失業者の退職手当」として支給する制度があります。
ちなみにさきに計算した退職手当を「一般の退職手当」といいます。


国家公務員の場合、この「失業者の退職手当」は雇用保険と同様にハローワークで支給手続きをすることとなっており、その手続きに必要なのが「国家公務員退職票」(「離職票」ではありません)です。


地方公務員の場合は失業者の退職手当も一般の退職手当同様に自治体から支給されますが、制度として「退職票」を発行し、雇用保険の基本手当と同様ハローワークで「失業の認定」(基本手当の条件である「失業状態」を認定すること)を受けることとしている自治体があります。

自己都合退職のみならず、最近は任期付職員であって短い任期であるとこのような場合もありえます。手続きは自治体によって異なりますので、これに該当すると思われる方は担当部署に問合せをしてください。


なお、ハローワークで求職を行うのは雇用保険加入の有無は問われませんし、離職票(退職票)がなくても大丈夫です。あくまでも離職票は雇用保険受給のための書類です。




【その他の雇用保険の制度】

教育訓練給付


「教育訓練給付」というものがあり、対象の教育(よく『教育訓練給付対象講座』などと書かれていますね)を受けると経費の2割を受けられるのですが、当然ながら公務員もこれも対象外です。

この制度、以前はもっと手厚く8割も支給される時代があったのですが、段々減らされて今では2割です。雇用保険加入3年以上(当面の間、初受給に限り1年)が条件なので、公務員を辞めて会社に入って3年以上経ったら考えましょう。


雇用継続給付

雇用継続給付として、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」、「介護休業給付」というものがあります。
これらは、60歳以降に継続雇用されて給料が下がった、あるいは育児休業や介護休業で給料が下がった場合に給付されるもので、裏を返せばそのような状況で事業主が給料を下げても雇用保険で面倒見るから、辞めさせないでねということですね。

これらも公務員に適用はありませんが、育児休業給付と介護休業給付については、共済組合においてそれぞれ同様の給付事業である「育児休業手当金」「介護休業手当金」として設定されています。



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