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公務員辞めたらどうなる ~子育て編~

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執筆者 吉田真弥尾さん(現役公務員)

経歴

大学卒業後、某地方自体体に奉職。
20年以上勤務する傍ら、公務員としての働き方に不安も感じ始め、独学で社会保険労務士の資格を取得。
当面退職予定はないものの、常に自己研鑽に磨きをかけるため新しい知識の入手に日々邁進中。

子供がいるけど公務員を退職しようかと考えています、となった時に不安なのが各種子育て支援制度がどうなるかということではないでしょうか。
今回は、公務員退職後の子育てに関係する法律等を見ていきましょう。

 

【児童手当】

 児童手当とは、小学校修了前の児童を養育している方に支給される手当です。
手当の月額は、3歳未満:一律1万円、3歳以上:5千円(3人目からは1万円)です。

この手当を受けるためには、申請して認定を受ける必要がありますが、この認定の手続きが公務員とそれ以外の方では異なります。

公務員以外の方は、住所地の市町村長に申請して認定を受けますが、公務員は、勤務先の長に申請し、認定を受けることとなっています。公務員の場合は、手続きが勤務先で完結していますが、公務員を辞めますと住所地の市町村長に申請しなければ手当をもらえませんから気をつける必要があります。

例えば、大阪市に住所があって神戸市役所に勤務していた場合、神戸市役所の中で児童手当の手続きは完結していましたが、そこから神戸市の企業に転職した場合は、児童手当は神戸市役所ではなく大阪市役所に申請することになります。




【育児休業】

 最近ニュースで育児休業が取り上げられています。
公務員は、子どもが3歳になるまで育児休業を取ることができます(3年間といわれることがありますが正確には3歳になるまでです)。


法律では次のように規定されています。

国家公務員の育児休業等に関する法律(カッコ書き等一部省略しています) 

第三条 職員は、任命権者の承認を受けて、当該職員の子を養育するため、当該子が三歳に達する日まで、育児休業をすることができる。ただし、当該子について、既に育児休業をしたことがあるときは、人事院規則で定める特別の事情がある場合を除き、この限りでない。


地方公務員の育児休業等に関する法律(カッコ書き等一部省略しています)


第二条 職員は、任命権者の承認を受けて、当該職員の子を養育するため、当該子が三歳に達する日まで、育児休業をすることができる。ただし、当該子について、既に育児休業をしたことがあるときは、条例で定める特別の事情がある場合を除き、この限りでない。



一方、民間企業の場合は、「育児・介護休業法」(正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」という長ったらしい名前)で、次のように規定されています(カッコ書き等一部省略しています)。

第五条  労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。

一  当該事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者
二  その養育する子が一歳に達する日(以下「一歳到達日」という。)を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者(当該子の一歳到達日から一年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)

  前項の規定にかかわらず、育児休業をしたことがある労働者は、当該育児休業を開始した日に養育していた子については、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合を除き、同項の申出をすることができない。



このように、民間企業の場合は1歳になるまで育児休業を取ることができることになっています。つまり、公務員を辞めて民間企業に転職すると、育児休業可能な期間が3分の1になるということです。

なお、子どもが1歳になるときに育児休業を取っていた場合、その配偶者が、子どもが1歳6ヶ月になるまでリレー的に育児休業を取れる制度があります。またリレーでなくても配偶者の病気などの事情、あるいは保育所への入所ができない場合は引き続き1歳6ヶ月まで育児休業が取れます。
平成25年4月、安倍総理は「成長戦略」の一項目として、この育児休業を3歳までに伸ばす方針を「3年間抱っこし放題」という言葉で発表しました。ただし、これは法律で決めるのではなく企業の独自の取り組みを支援するという形だそうです。



【休業中の収入について】

公務員、民間企業とも育児休業中は無給です(民間企業の場合、規定で給与を支払うことは問題ありません)。
その間の支援として、公務員の場合は「育児休業手当金」が共済組合から、民間企業の場合は「育児休業給付金」が雇用保険から支給されます(雇用継続給付)。

その額は、いずれも賃金日額(休業前6ヶ月の賃金総額を180で割ったもの)の5割ですが、育児休業給付金の場合は給与が支払われる場合その給与と給付金の合計が8割を超える場合はその分が減額されます。

公務員の場合は法律で無給とされていますので調整はありません。
実際には期間延長の有無よりも、育児休業そのものが取りにくいという現状があります。「働き方」の変化もそうですが、「働かせ方」の変化もより必要となってくるでしょう。



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